歌詳細
項目 | 内容 |
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番号 | 巻20-4331 |
漢字本文(題詞) | 追、痛防人悲別之心作歌一首〔并短歌〕 |
漢字本文 | 天皇乃等保能朝庭等之良奴日筑紫國波安多麻毛流於佐倍乃城曽等聞食四方國尒波比等佐波尒美知弖波安礼杼登利我奈久安豆麻乎能故波伊田牟可比加敝里見世受弖伊佐美多流多家吉軍卒等祢疑多麻比麻氣乃麻尒〻〻多良知祢乃波〻我目可礼弖若草能都麻乎母麻可受安良多麻能月日餘美都〻安之我知流難波能美津尒大船尒末加伊之自奴伎安佐奈藝尒可故等登能倍由布思保尒可知比伎乎里安騰母比弖許藝由久伎美波奈美乃間乎伊由伎佐具久美麻佐吉久母波夜久伊多里弖大王乃美許等能麻尒末麻須良男乃許己呂乎母知弖安里米具理事之乎波良婆都〻麻波受可敝理伎麻勢登伊波比倍乎等許敝尒須恵弖之路多倍能蘇田遠利加敝之奴婆多麻乃久路加美之伎弖奈我伎氣遠麻知可母戀牟波之伎都麻良波 |
読み下し文(題詞) | 追ひて、防人の別を悲しぶる心を痛みて作れる歌一首〔并せて短歌〕 |
読み下し文 | 大君の遠の朝廷としらぬひ筑紫の国は敵守るおさへの城そと聞こし食す四方の国には人さはに満ちてはあれど鶏が鳴く東男は出で向かひ顧みせずて勇みたる猛き軍士とねぎたまひ任けのまにまにたらちねの母が目離れて若草の妻をもまかずあらたまの月日数みつつ葦が散る難波の御津に大船にま櫂しじ貫き朝なぎに水手整へ夕潮に梶引き折り率ひて漕ぎ行く君は波の間をい行きさぐくみま幸くも早く至りて大君の命のまにまますらをの心を持ちてあり巡り事し終はらば障まはず帰り来ませと斎瓮を床辺にすゑて白たへの袖折り返しぬばたまの黒髪敷きて長き日を待ちかも恋ひむ愛しき妻らは |
訓み | おほきみのとほのみかどとしらぬひつくしのくにはあたまもるおさへのきそときこしめすよものくににはひとさはにみちてはあれどとりがなくあづまをのこはいでむかひかへりみせずていさみたるたけきいくさとねぎたまひまけのまにまにたらちねのははがめかれてわかくさのつまをもまかずあらたまのつきひよみつつあしがちるなにはのみつにおほぶねにまかいしじぬきあさなぎにかこととのへゆふしほにかぢひきをりあどもひてこぎゆくきみはなみのまをいゆきさぐくみまさきくもはやくいたりておほきみのみことのまにまますらをのこころをもちてありめぐりことしをはらばつつまはずかへりきませといはひべをとこへにすゑてしろたへのそでをりかへしぬばたまのくろかみしきてながきけをまちかもこひむはしきつまらは |
現代語訳 | 天皇の遠い朝廷として、しらぬひ筑紫の国を、天皇は、外敵を防ぐ鎮護のとりでとなさり、お治めになる天下四方の国に、人民はいっぱい満ちているのに、鶏が鳴く東国の男を、敵に立ち向かってひるまない勇敢な兵士だとして、労をいたわりなさる。その任命のままに、たらちねの母の目を離れ、若草の妻の手も枕とせず、あらたまの月日を過ごしつつ、蘆が散る難波の港で大船に両舷の櫂を一面に貫き、朝凪の海に水手をよび揃え、夕潮の中に楫を引きたわめて、軍団を率いて漕ぎ出してゆくあなた。あなたは波間を押し分けて行き、無事に早々と筑紫に着き、天皇の命令のままに大夫の心をもって各地を廻りつづけ、任務が終れば支障なく帰って来てください。そう願いつつ斎瓮を床のほとりに据え、白妙の衣の袖を折り反し、ぬばたまの黒髪を敷いて長い日々を待ち焦がれているだろう。いとしい妻たちは。 |
歌人 | 大伴宿禰家持 / おほとものすくねやかもち |
歌人別名 | 少納言, 家持, 越中国守, 大伴家持, 守, 少納言, 大帳使, 家持, 主人 / せうなごん, やかもち |
歌体 | 長歌 |
時代区分 | 第4期 |
部立 | なし |
季節 | 春 |
補足 | 大伴家持/おほとものやかもち/大伴家持 |
詠み込まれた地名 | 大和 / 奈良 |
関連地名 | 【故地名】東 【故地名読み】あずま 【故地説明】東国地方の総称。範囲は一定しないが、集中では、東海道は遠江以東、東山道は信濃以東をさし、陸奥を含む。 【故地名】筑紫の国 【故地名読み】つくしのくに 【故地説明】筑紫に同じ。 【故地名】難波の御津 【故地名読み】なにわのみつ 【現在地名】大阪府 【故地説明】→大伴の御津(難波の御津ともいう。大伴の地にあった港。難波宮のあった上町台地の一角、位置未詳。南区三津寺町はその遺称か。) 【故地名】三津(1) 【故地名読み】みつ 【現在地名】大阪府大阪市 【故地説明】難波(大阪市)の湊、所在未詳。→難波の御津・大伴の御津上町台地の西方にあった海浜地で大阪市南区三津寺町はその遺称か。(1) 【地名】筑紫の国:難波の三津:1東 【現在地名】九州地方の総名にも、また筑前・筑後の総称としても用いる。:難波の江津をいうが、その位置について諸説があり、またそれらの幾つかにまたがって用いたと思われる場合もある。:難波の江津をいうが、その位置について諸説があり、またそれらの幾つかにまたがって用いたと思 |