歌詳細

松が枝の地に着くまで降る雪を見ずてや妹が籠り居るらむ

項目 内容
番号 20-4439
漢字本文(題詞) 冬日幸于靱負御井之時、内命婦石川朝臣應詔賦雪歌一首〔諱曰邑婆〕
漢字本文 麻都我延乃都知尒都久麻埿布流由伎乎美受弖也伊毛我許母里乎流良牟
漢字本文(左注) 于時水主内親王、寝膳不安、累日不参。
因以此日、太上天皇、勅侍嬬等曰、為遣水主内親王賦雪作歌奉獻者。
於是諸命婦等不堪作歌。而此石川命婦、獨作此歌奏之。
右件四首、上総國大掾正六位上大原真人今城、傳誦云尓。[年月未詳]
読み下し文(題詞) 冬の日に靫負の御井に幸しし時に、内命婦石川朝臣の詔に応へて雪を賦める歌一首〔諱を邑婆といふ〕
読み下し文 松が枝の地に着くまで降る雪を見ずてや妹が籠り居るらむ
読み下し文(左注) 時に水主内親王、寝膳安からず、日を累ねて参りたまはず。
因りてこの日を以ちて、太上天皇、侍嬬等に勅したまひしく「水主内親王に遣らむために雪を賦みて歌を作りて奉献れ」と宣り給へり。
ここに諸命婦等歌を作り堪へず。しかるにこの石川命婦、独りこの歌を作りて奏しき。
右の件の四首は、上総国大掾正六位上大原真人今城、傳へ誦みてしか云ふ。[年月いまだ詳らかならず]
訓み まつがえのつちにつくまでふるゆきをみずてやいもがこもりをるらむ
現代語訳 松の枝が地に垂れさがるほどに降ったこの雪を見ることもなく、あなたは家にこもっておいででしょうか。
現代語訳(左注) この時水主内親王は寝食もままならぬ病臥がつづいて、参内できなかった。
そこでこの日、元正上皇が侍女たちに仰せられて「水主内親王に贈るために、雪を題に歌を作ってさし出すように」といわれた。
この時、多くの命婦たちは歌を作ることができなかったか、この石川命婦がひとり、この歌を作って奏上した。
以上四首は、上総国の大掾、正六位上大原真人今城が伝誦したという〔詳しい年月はわからない〕。
歌人 大原真人今城 / おほはらのまひといまき
歌人別名 大原今城, 大原今城真人, 大原真人
歌体 短歌
時代区分 第4期
部立 なし
季節 なし
補足 石川命婦/いしかはのみやうぶ/石川命婦(石川郎女)
詠み込まれた地名 大和平城京 / 奈良
関連地名 【故地名】上総の国
【故地名読み】かみつふさのくに
【現在地名】千葉県
【故地説明】国名。千葉県の中部。カヅサともいう。
【故地名】靭負の御井
【故地名読み】ゆけいのみい
【現在地名】奈良県奈良市
【故地説明】平城宮の衛門府にあった井。→奈良の宮 一説に奈良県磯城郡田原町蔵堂。