歌詳細

橘は実さへ花さへその葉さへ枝に霜降れどいや常葉の木

項目 内容
番号 6-1009
漢字本文(題詞) 冬十一月、左大辨葛城王等賜姓橘氏之時御製歌一首
漢字本文 橘者実左倍花左倍其葉左倍枝尒霜雖降益常葉之樹
漢字本文(左注) 右、冬十一月九日、従三位葛城王従四位上佐為王等、辞皇族之高名、賜外家之橘姓已訖。
於時太上天皇、々后、共在于皇后宮、以為肆宴、而即御製賀橘之歌、并賜御酒宿祢等也。
或云、此歌一首太上天皇御歌。
但天皇々后御歌各有一首者。其歌遺落未得探求焉。
今檢案内、八年十一月九日葛城王等、願橘宿祢之姓上表。以十七日、依表乞、賜橘宿祢。
読み下し文(題詞) 冬十一月に、左大弁葛城王等姓橘の氏を賜ひし時の御製歌一首
読み下し文 橘は実さへ花さへその葉さへ枝に霜降れどいや常葉の木
読み下し文(左注) 右は、冬十一月九日に、従三位葛城王と従四位上佐為王等と、皇族の高名を辞して外家の橘の姓を賜はること已に訖りぬ。
時に太上天皇、皇后、共に皇后宮に在して肆宴を為し、即ち橘を賀く歌を御製ひ、并せて御酒を宿祢等に賜へり。
或は云はく「この歌一首は太上天皇の御歌なり。
ただ天皇皇后の御歌各一首あり」といへり。その歌遺落して探り求むることを得ず。
今案内を検るに、「八年十一月九日に葛城王等、橘宿祢の姓を願ひて表を上る。十七日を以ちて、表の乞に依りて、橘宿祢を賜ふ」といへり。
訓み たちばなはみさへはなさへそのはさへえにしもふれどいやとこはのき
現代語訳 橘は実までも花までも輝き、その葉まで枝に霜が降りてもますます常緑である樹よ。
現代語訳(左注) 右は冬十一月九日に従三位葛城王と従四位上佐為王らとが、皇族たる高名を辞退して、外戚の橘氏の姓を頂くことが完了した。
その時太上天皇、皇后ともに皇后の宮殿で御宴をもよおし、その場で橘をほめる歌をお作りになり、加えて御酒を葛城ら一族にあたえた。
一説によると「この歌一首は太上天皇の作である。
ただし天皇皇后の作は一首ずつある」という。その歌は脱落していて探し出すことができない。
今、記録を調べると、天平八年十一月九日に葛城王たちが橘宿禰の姓を賜わることを願って上表文を出している。十七日に上表文の願いどおりに橘宿禰を与えるとある。
歌人 聖武天皇 / しやうむてんわう
歌人別名 天皇, 太上天皇, 寧楽宮即位天皇
歌体 短歌
時代区分 第3期
部立 雑歌
季節
補足 聖武天皇/しやうむてんわう/聖武天皇
詠み込まれた地名 不明 / 不明