歌詳細

古のますら壮士の相競ひ妻問ひしけむ葦屋の菟原処女の奥つ城をわが立ち見れば永き世の語りにしつつ後人の偲ひにせむと玉桙の道の辺近く岩構へ作れる塚を天雲のそくへの限りこの道を行く人ごとに行き寄りてい立ち嘆かひある人は音にも泣きつつ語り継ぎ偲ひ継ぎ来る処女らが奥つ城所我さへに見れば悲しも古思へば

項目 内容
番号 9-1801
漢字本文(題詞) 過葦屋處女墓時作歌一首〔并短歌〕
漢字本文 古之益荒丁子各競妻問為祁牟葦屋乃菟名日處女乃奥城矣吾立見者永世乃語尒為乍後人偲尒世武等玉桙乃道邊近磐構作冢矣天雲乃退部乃限此道矣去人毎行因射立嘆日或人者啼尒毛哭乍語嗣偲継来處女等賀奥城所吾并見者悲喪古思者
読み下し文(題詞) 葦屋処女の墓を過ぎし時に作れる歌一首〔并せて短歌〕
読み下し文 古のますら壮士の相競ひ妻問ひしけむ葦屋の菟原処女の奥つ城をわが立ち見れば永き世の語りにしつつ後人の偲ひにせむと玉桙の道の辺近く岩構へ作れる塚を天雲のそくへの限りこの道を行く人ごとに行き寄りてい立ち嘆かひある人は音にも泣きつつ語り継ぎ偲ひ継ぎ来る処女らが奥つ城所我さへに見れば悲しも古思へば
訓み いにしへのますらをのこのあひきほひつまどひしけむあしのやのうなひをとめのおくつきをわがたちみればながきよのかたりにしつつのちひとのしのひにせむとたまほこのみちのへちかくいはかまへつくれるつかをあまくものそくへのかぎりこのみちをゆくひとごとにゆきよりていたちなげかひあるひとはねにもなきつつかたりつぎしのひつぎくるをとめらがおくつきどころわれさへにみればかなしもいにしへおもへば
現代語訳 昔の勇ましい男が競って求婚したという葦屋のうない処女の墓へやって来て見ると、末永き代の語りとしつつ後の人のしのぶよすがにしようと、玉桙の道のべ近くに岩を築いて作った墓に、天雲の流れる果ての人まで、この道をゆく人は皆立ち寄っては嘆きつつ、ある人は声を出してまで泣いたりして、語り伝えしのびついで来た。この処女たちの墓所は、私もまた見ると悲しいことよ。昔を考えて。
歌人 田辺福麻呂之歌集 / たなべのさきまろのかしふ
歌体 長歌
時代区分 第4期
部立 挽歌
季節 なし
補足 田辺福麻呂/たなべのさきまろ/田辺福麻呂【田辺福麻呂之歌集出】
詠み込まれた地名 播磨 / 兵庫
関連地名 【故地名】葦屋
【故地名読み】あしや
【現在地名】兵庫県
【故地説明】兵庫県芦屋市及び神戸市東部一帯の地。六甲山南麓一帯を広く称した。あしのやとも。
【故地名】菟名日
【故地名読み】うない
【故地説明】普通名詞。一説に地名。→菟原(うはら)