歌詳細
項目 | 内容 |
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番号 | 巻2-194 |
漢字本文(題詞) | 柿本朝臣人麻呂獻泊瀬部皇女忍坂部皇子歌一首〔并短歌〕 |
漢字本文 | 飛鳥明日香乃河之上瀬尒生玉藻者下瀬尒流觸経玉藻成彼依此依靡相之嬬乃命乃多田名附柔膚尚乎釼刀於身副不寐者烏玉乃夜床母荒良無〔一云、阿礼奈牟〕所虚故名具鮫兼天氣田敷藻相屋常念而〔一云、公毛相哉登〕玉垂乃越能大野之旦露尒玉裳者埿打夕霧尒衣者沾而草枕旅宿鴨為留不相君故 |
読み下し文(題詞) | 柿本朝臣人麻呂の泊瀬部皇女・忍坂部皇子に献れる歌一首〔并せて短歌〕 |
読み下し文 | 飛ぶ鳥の明日香の川の上つ瀬に生ふる玉藻は下つ瀬に流れ触らばふ玉藻なすか寄りかく寄り靡かひし夫のみことのたたなづく柔肌すらを剣大刀身に副へ寝ねばぬばたまの夜床も荒るらむ〔一に云ふ、荒れなむ〕そこ故に慰めかねてけだしくも逢ふやと思ひて〔一に云ふ、君も逢ふやと〕玉垂の越智の大野の朝露に玉裳はひづち夕霧に衣は濡れて草枕旅寝かもする逢はぬ君故 |
訓み | とぶとりのあすかのかはのかみつせにおふるたまもはしもつせにながれふらばふたまもなすかよりかくよりなびかひしつまのみことのたたなづくにきはだすらをつるぎたちみにそへねねばぬばたまのよどこもあるらむ〔いつにいふ、あれなむ〕そこゆゑになぐさめかねてけだしくもあふやとおもひて〔いつにいふ、きみもあやふと〕たまたれのをちのおほののあさつゆにたまもはひづちゆふぎりにころもはぬれてくさまくらたびねかもするあはぬきみゆゑ |
現代語訳 | 飛ぶ鳥の明日香川の川上の美しい藻は川下に流れもつれあう。その藻のようにあちらこちらに寄りそい靡きあった夫のあなたは、重ね合ったやわらかな肌さえも、剣や大刀のように身にそえて寝ていないので、ぬばたまの実のような黒闇の夜は、寝床も荒れているでしょう〔荒れるでしょう〕。そう思うと私の心は慰めかねてきっとお逢いできるだろうかと思って〔あなたにお逢いできるだろうかと〕玉を貫く越智の大野の、朝の露に美しい裳は濡れ、夕べの霧に衣は濡れて、草を枕の旅寝をすることだ。もう生きて逢えない君だから。 |
歌人 | 柿本朝臣人麻呂 / かきのもとのあそみひとまろ |
歌人別名 | 人麻呂 |
歌体 | 長歌 |
時代区分 | 第2期 |
部立 | 挽歌 |
季節 | なし |
補足 | 柿本人麻呂/かきのもとのひとまろ/柿本人麻呂 |
詠み込まれた地名 | 不明 / 不明 |
関連地名 | 【故地名】明日香の川 【故地名読み】あすかのかわ 【現在地名】奈良県高市郡 【故地説明】明日香の川 【故地名】越智の大野 【故地名読み】おちのおおの 【現在地名】奈良県高市郡高取町 【故地説明】奈良県高市郡高取町大字越智を中心とする一帯の地。越智の南、同町車木に斉明天皇の越智岡上陵、東北に橿原市北越智町があり、それらを含む丘陵地、西方は曽我川に沿う平野。河島皇子墓は所在未詳。一説に明日香村越。 【地名】明日香の川:越智の大野 【現在地名】奈良県高市郡畑の山中に発し、稲淵山の西麓を回り、甘橿丘の東北、藤原宮跡を経て大和川に注ぐ:奈良県高市郡高取町越野を中心とする一帯 |