歌詳細

天降りつく神の香山打ち靡く春さり来れば桜花木の暗れ茂に松風に池波立ち辺つへにはあぢむら騒き沖辺には鴨妻呼ばひももしきの大宮人のまかり出て漕ぎける船は竿梶も無くてさぶしも漕がむと思へど

項目 内容
番号 3-260
漢字本文(題詞) 或本歌云
漢字本文 天降就神乃香山打靡春去来者櫻花木暗茂松風丹池浪飇邊都遍者阿遅村動奥邊者鴨妻喚百式乃大宮人乃去出榜来舟者竿棹母無而佐夫之毛榜与雖思
漢字本文(左注) 右今案、遷都寧樂之後怜舊作此歌歟
読み下し文(題詞) 或る本の歌に云はく
読み下し文 天降りつく神の香山打ち靡く春さり来れば桜花木の暗れ茂に松風に池波立ち辺つへにはあぢむら騒き沖辺には鴨妻呼ばひももしきの大宮人のまかり出て漕ぎける船は竿梶も無くてさぶしも漕がむと思へど
読み下し文(左注) 右は今案ふるに、都を寧楽に遷しし後に旧きを怜びてこの歌を作れるか。
訓み あもりつくかみのかぐやまうちなびくはるさりくればさくらばなこのくれしげにまつかぜにいけなみたちへつへにはあぢむらさわきおきへにはかもつまよばひももしきのおほみやひとのまかりでてこぎけるふねはさをかぢもなくてさぶしもこがむとおもへど
現代語訳 天から降って来たという聖なる香具山に草木が靡く春になると、桜の花は木の下も暗くなるほど茂り、松吹く風に池の波が立って、岸の方では味鴨が騒ぎ、沖の方では鴨が妻を呼んで鳴き、壮麗な大宮の人々が御前を退出して遊んだ船には梶も棹もなく、寂しいことよ。漕ごうと思ったけれど。
現代語訳(左注) 右の歌は、今考えると都を奈良に移したあとで、旧居の地を懐しんでこの歌を作ったのだろうか。
歌人 鴨君足人 / かものきみのたりひと
歌体 長歌
時代区分 第2期
部立 雑歌
季節 なし
補足 鴨足人/かものたりひと/鴨足人
詠み込まれた地名 不明 / 不明
関連地名 【故地名】神の香具山
【故地名読み】かみのかぐやま
【現在地名】奈良県
【故地説明】→天の香具山(奈良県橿原市と桜井市との境にある香具山(148メートル)。神の香具山とも単に香具山ともいう。大和三山の一。)
【故地名】奈良
【故地名読み】なら
【現在地名】奈良県奈良市
【故地説明】奈良市を中心に、東の春日・高円の連山・北の奈良山・西の生駒山に囲まれた奈良盆地北部の地。元明天皇和銅三(710)年以降70余年間、平城京のいとなまれた所。
【地名】香具山
【現在地名】奈良県橿原市の東部にある山