歌詳細
項目 | 内容 |
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番号 | 巻13-3240 |
漢字本文 | 王命恐雖見不飽楢山越而真木積泉河乃速瀬竿刺渡千速振氏渡乃多企都瀬乎見乍渡而近江道乃相坂山丹手向為吾越往者楽浪乃志我能韓埼幸有者又反見道前八十阿毎嗟乍吾過往者弥遠丹里離来奴弥高二山文越来奴釼刀鞘従抜出而伊香胡山如何吾将為往邊不知而 |
読み下し文 | 大君の命恐み見れど飽かぬ奈良山越えて真木積む泉の川の速き瀬を棹さし渡りちはやぶる宇治の渡の激つ瀬を見つつ渡りて近江道の逢坂山に手向けして我が越え行けば楽浪の志賀の唐崎幸くあらばまたかへり見む道の隈八十隈ごとに嘆きつつ我が過ぎ行けばいや遠に里離り来ぬいや高に山も越え来ぬ剣大刀鞘ゆ抜き出でて伊香山いかにか我がせむ行くへ知らずて |
訓み | おほきみのみことかしこみみれどあかぬならやまこえてまきつむいづみのかはのはやきせをさをさしわたりちはやぶるうぢのわたりのたぎつせをみつつわたりてあふみぢのあふさかやまにたむけしてわがこささなみのしがのからさきさきくあらばまたかへりみむみちのくまやそくまごとになげきつつわがすぎゆけばいやとほにさとさかりきぬいやたかにやまもこえきぬつるぎたちさやゆぬきいでていかごやまいゆくへしらずて |
現代語訳 | 大君の御命令をかしこんで、いくらでも見飽きない奈良山を越え、真木を積み流す泉の川の急流を竿さして渡り、逸早ぶる宇治の渡し場の、流れの早い瀬を見ながら渡って、近江道の相坂山に手向けをして越えていくと、楽浪の志賀の韓崎よ、幸(さいわい)に無事ならばまた帰り来てみよう。道の角(かど)の多くの角ごとに、嘆きつつ過ぎて行くと、一層遠く里は離れて来た。ますます高く山も越えて来た。剣太刀を鞘から抜き出してい撃(か)ける伊香胡山を、どのように私は越えよう。行方も知らずに。 |
歌人 | 作者未詳 / |
歌体 | 長歌 |
時代区分 | 不明 |
部立 | 雑歌 |
季節 | なし |
補足 | 穂積老/ほづみのおゆ/ |
詠み込まれた地名 | 不明 / 不明 |
関連地名 | 【故地名】逢坂山 【故地名読み】おおさかやま 【故地説明】滋賀県大津市西南、京都市との境をなす逢坂山。山城国と近江国との境にあり、古来交通の要衝であった。 【故地名】近江道 【故地名読み】おおみじ 【現在地名】滋賀県 【故地説明】近江地方の意。県は六世紀ごろ全国的に設けられた行政区画の名、朝廷の御料地ともいわれる。県廃止後もその称が残り、単に地方の意で用いられた。 【故地名】伊香山 【故地名読み】いかごやま 【現在地名】滋賀県伊香郡木之本町 【故地説明】滋賀県伊香郡木之本町大音の伊香具神社付近の山。塩津山の東南、賎ヶ岳の南嶺、琵琵湖岸の山。 【故地名】泉の川 【故地名読み】いずみのかわ 【現在地名】京都府相楽郡 【故地説明】泉の地を流れる木津川(奈良県の宇陀に発し伊賀をすぎ、泉の地を流れ、木津から北流して淀川に合する)のこと。 【故地名】宇治の渡 【故地名読み】うじのわたり 【現在地名】京都府 【故地説明】宇治川の渡河点、位置未詳。 【故地名】唐崎 【故地名読み】からさき 【現在地名】滋賀県大津市 【故地説明】滋賀県大津市唐崎の唐崎神社の周辺。琵琶湖西岸、近江旧都の東北方。 【故地名】楽浪 【故地名読み】ささなみ 【現在地名】滋賀県 【故地説明】琵琶湖西南部一帯の地の総称。おおむね滋賀県大津市および滋賀郡の地にあたる。 【故地名】志賀の唐崎 【故地名読み】しがのからさき 【現在地名】滋賀県大津市 【故地説明】→唐崎(滋賀県大津市唐崎の唐崎神社の周辺。琵琶湖西岸、近江旧都の東北方。) 【故地名】奈良山 【故地名読み】ならやま 【現在地名】奈良県奈良市 【故地説明】平城京の北郊に連なる丘陵性の山(100メートル内外)で、奈良市北郊の奈良坂以西山陵町にいたる低山の総称。奈良山越えは佐紀より歌姫越えの道。 【地名】楽浪:志賀の唐崎:伊香山:奈良山:泉の川:宇治の渡:近江道:逢坂山 【現在地名】近江国西南部の地名。:大津市唐崎。:滋賀県の伊香郡西浅井塩津の東部から同郡木之本町大音にかけての山地。:奈良市一条大路の北方背後に連なる丘陵性の山地。:現在の木津川。奈良県宇陀郡および三重県の伊賀諸郡より発し、京都府相楽郡の久邇(恭仁)京を貫流し、京都市南方 |