歌詳細

あらたまの年は来去きて玉梓の使の来ねば霞立つ長き春日を天地に思ひ足らはしたらちねの母が飼ふ蚕の繭隠り息づき渡り我が恋ふる心の中を人に言ふものにしあらねば松が根の待つこと遠く天伝ふ日の暮れぬれば白たへの我が衣手も通りて濡れぬ

項目 内容
番号 13-3258
漢字本文 荒玉之年者来去而玉梓之使之不来者霞立長春日乎天地丹思足椅帯乳根笶母之養蚕之眉隠氣衝渡吾恋心中少人丹言物西不有者松根松事遠天云日之闇者白木綿之吾衣袖裳通手沾沼
読み下し文 あらたまの年は来去きて玉梓の使の来ねば霞立つ長き春日を天地に思ひ足らはしたらちねの母が飼ふ蚕の繭隠り息づき渡り我が恋ふる心の中を人に言ふものにしあらねば松が根の待つこと遠く天伝ふ日の暮れぬれば白たへの我が衣手も通りて濡れぬ
訓み あらたまのとしはきゆきてたまづさのつかひのこねばかすみたつながきはるひをあめつちにおもひたらはしたらちねのははがかふこのまよごもりいきづきわたりわがこふるこころのうちをひとにいふものにまつがねのまつこととほくあまつたふひのくれぬればしろたへのわがころもでもとほりてぬれぬ
現代語訳 あらたまの年はやって来てまた去ってゆき、久しく玉梓の使いは来ないので、霞立つ長い森の一日を、天地にみちるほどに心を尽くして思い、たらちねの母の養う蚕が繭にこもるように心がいぶせく嘆きつづけ、わが恋する心の内は人に言うものでもないので、松の根のごとく待つことも遠く、空をゆく太陽もくれてしまうと、白妙の私の衣の袖はすっかり濡れてしまった。
歌人 作者未詳 /
歌体 長歌
時代区分 不明
部立 相聞歌
季節 なし
補足 不明//
詠み込まれた地名 不明 / 不明