歌詳細

百足らず山田の道を波雲の愛し妻と語らはず別れし来れば速川のい行きも知らず衣手のかへるも知らず馬じもの立ちてつまづくせむすべのたづきを知らにもののふの八十の心を天地に思ひ足らはし魂合はば君来ますやと我が嘆く八尺の嘆き玉桙の道来る人の立ち留まりいかにと問へば答へ遣るたづきを知らにさにつらふ君が名言はば色に出でて人知りぬべみあしひきの山より出づる月待つと人には言ひて君待つ我を

項目 内容
番号 13-3276
漢字本文 百不足山田道乎浪雲乃愛妻跡不語別之来者速川之往文不知衣袂笶反裳不知馬自物立而爪衝為須部乃田付乎白粉物部乃八十乃心■(口+刂)天地二念足橋玉相者君来益八跡吾嗟八尺之嗟玉桙乃道来人乃立留何常問者答遣田付乎不知散釣相君名曰者色出人可知足日木能山従出月待跡人者云而君待吾乎
読み下し文 百足らず山田の道を波雲の愛し妻と語らはず別れし来れば速川のい行きも知らず衣手のかへるも知らず馬じもの立ちてつまづくせむすべのたづきを知らにもののふの八十の心を天地に思ひ足らはし魂合はば君来ますやと我が嘆く八尺の嘆き玉桙の道来る人の立ち留まりいかにと問へば答へ遣るたづきを知らにさにつらふ君が名言はば色に出でて人知りぬべみあしひきの山より出づる月待つと人には言ひて君待つ我を
訓み ももたらずやまだのみちをなみくものうるはしづまとかたらはずわかれしくればはやかはのいゆきもしらずころもでのかへるもしらずうまじものたちてつまづくせむすべのたづきをしらにもののふのやそのあめつちにおもひたらはしたまあはばきみきますやとわがなげくやさかのなげきたまほこのみちくるひとのたちとまりいかにととへばこたへやるたづきをしらにさにつらふきみがないはばいろにいでてひとしりぬべみあしひきのやまよりいづるつきまつとひとにはいひてきみまつわれを
現代語訳 百に足りぬ八十(や)の山田の道を、波なす雲のごとくうるわしい妻と、心尽くして語らうことなく別れて来ると、速川の流れ行く往きも知らず、衣手の翻る帰りもわからず、馬のように道に立ちどまってはつまずくよ。――どうしたらよいか、その方法もわからず、物部の八十の様々な心の物思いを天地に満ちるほどに尽くし、魂が合ったらあなたは来るだろうかと、わが嘆く、長い吐息よ。玉桙の道を歩いて来る人が立ちどまって、どうしたかと聞くと、答え返す術も知らず、紅顔のあなたの名を言うと、世間の表に出て人が知ってしまうだろうから、あしひきの山から出る月を待っているのだと、人には言ってあなたを待っているよ、私は。
歌人 作者未詳 /
歌体 長歌
時代区分 不明
部立 相聞歌
季節 なし
補足 不明//
詠み込まれた地名 不明 / 不明
関連地名 【故地名】山田の道
【故地名読み】やまだのみち
【現在地名】奈良県桜井市
【故地説明】奈良県桜井市山田を通る道。明日香方面から東北三輪山方面に向かう古道。山田には蘇我倉山田石川麿が最期を遂げた山田寺址がある。
【地名】山田の道
【現在地名】奈良県高市郡明日香村雷から桜井市山田・阿部を経て、同市谷の仁王堂に出る道、磐余街道をいう。