歌詳細

白雲のたなびく国の青雲の向伏す国の天雲の下なる人は吾のみかも君に恋ふらむ吾のみかも君に恋ふれば天地に言を満てて恋ふれかも胸の病みたる思へかも心の痛き吾が恋ぞ日に異に増さるいつはしも恋ひぬ時とはあらねどもこの九月を我が背子が偲ひにせよと千代にも偲ひ渡れと万代に語り継がへと始めてしこの九月の過ぎまくをいたもすべなみあらたまの月の変はればせむすべのたどきを知らに岩が根のこごしき道の石床の根延へる門に朝には出で居て嘆き夕には入り居恋ひつつぬばたまの黒髪敷きて人の寝る甘睡は寝ずに大船のゆくらゆくらに思ひつつ我が寝る夜らは数みもあへぬかも

項目 内容
番号 13-3329
漢字本文 白雲之棚曳国之青雲之向伏国乃天雲下有人者妾耳鴨君尒恋濫吾耳鴨夫君尒恋礼薄天地満言恋鴨胷之病有念鴨意之痛妾恋叙日尒異尒益何時橋物不恋時等者不有友是九月乎吾背子之偲丹為与得千世尒物偲渡登万代尒語都我部等始而之此九月之過莫呼伊多母為便無見荒玉之月之易者将為須部乃田度伎乎不知石根之許凝敷道之石床之根延門尒朝庭出座而嘆夕庭入座恋乍烏玉之黒髪敷而人寐味寐者不宿尒大船之行良行良尒思乍吾寐夜等者数物不敢鴨
漢字本文(左注) 右一首
読み下し文 白雲のたなびく国の青雲の向伏す国の天雲の下なる人は吾のみかも君に恋ふらむ吾のみかも君に恋ふれば天地に言を満てて恋ふれかも胸の病みたる思へかも心の痛き吾が恋ぞ日に異に増さるいつはしも恋ひぬ時とはあらねどもこの九月を我が背子が偲ひにせよと千代にも偲ひ渡れと万代に語り継がへと始めてしこの九月の過ぎまくをいたもすべなみあらたまの月の変はればせむすべのたどきを知らに岩が根のこごしき道の石床の根延へる門に朝には出で居て嘆き夕には入り居恋ひつつぬばたまの黒髪敷きて人の寝る甘睡は寝ずに大船のゆくらゆくらに思ひつつ我が寝る夜らは数みもあへぬかも
読み下し文(左注) 右は一首
訓み しらくものたなびくくにのあをくものむかぶすくにのあまくものしたなるひとはあのみかもきみにこふらむあのみかもきみにこふればあめつちにことをばみててこふれかもむねのやみたるおもへかもこころあがこひぞひにけにまさるいつはしもこひぬときとはあらねどもこのながつきをわがせこがしのひにせよとちよにもしのひわたれとよろづよにかたりつがへとはじめてしこのながつきのすぎまくをいたもすあらたまのつきのかはればせむすべのたどきをしらにいはがねのこごしきみちのいはとこのねはへるかどにあしたにはいでゐてなげきゆふへにはいりゐこひつつぬばたまのくろかみしきてひとのぬるうまいおほぶねのゆくらゆくらにおもひつつわがぬるよらはよみもあへぬかも
現代語訳 白雲がたなびき、青雲が遠く垂れこめる国の、天雲の下にいる人は、私だけがあなたに恋しているのだろうか。私だけがあなたに恋しているので、天地に一杯になるほどに恋することばをいい、それほどに恋しいからか胸がうずいている。それほどに思うからか心が痛む。私の恋は日日一段とまさる。いつとて恋しくない時はないのだが、とくにこの九月を、あの人が思い出にし、いつまでも思い出しつづけて、後々長く語り合いつげといって、愛を語らい始めた。この九月の過ぎようとしているのが、何とも仕方ない。あらたまの月か変わるのでどうしたらよいか、その方法もわからず、わだかまる岩もけわしい道で、床のような岩がつづく道に向かって、門を朝に出て嘆き夕べに入って恋いつつ、ぬばたまの黒髪を横たえて人が寝るという熟睡もせずに、大船に揺られるようにゆらゆらと物を思いつつ、私の寝る夜は、数えきれないほどだなあ。
歌人 作者未詳 /
歌体 長歌
時代区分 不明
部立 挽歌
季節 なし
補足 不明//
詠み込まれた地名 不明 / 不明