歌詳細

夕されば葦辺に騒き明け来れば沖になづさふ鴨すらも妻とたぐひて我が尾には霜な降りそと白たへの翼さし交へて打ち払ひさ寝とふものを行く水の反らぬごとく吹く風の見えぬがごとく跡もなき世の人にして別れにし妹が着せてしなれ衣袖片敷きて独りかも寝む

項目 内容
番号 15-3625
漢字本文(題詞) 古挽歌一首〔并短歌〕
漢字本文 由布左礼婆安之敞尒佐和伎安氣久礼婆於伎尒奈都佐布可母須良母都麻等多具比弖和我尾尒波之毛奈布里曽等之路多倍乃波祢左之可倍弖宇知波良比左宿等布毛能乎由久美都能可敝良奴其等久布久可是能美延奴我其等久安刀毛奈吉与能比登尒之弖和可礼尒之伊毛我伎世弖思奈礼其呂母蘇弖加多思吉弖比登里可母祢牟
読み下し文(題詞) 古き挽歌一首〔并せて短歌〕
読み下し文 夕されば葦辺に騒き明け来れば沖になづさふ鴨すらも妻とたぐひて我が尾には霜な降りそと白たへの翼さし交へて打ち払ひさ寝とふものを行く水の反らぬごとく吹く風の見えぬがごとく跡もなき世の人にして別れにし妹が着せてしなれ衣袖片敷きて独りかも寝む
訓み ゆふさればあしへにさわきあけくればおきになづさふかもすらもつまとたぐひてわがをにはしもなふりそとしろたへのはねさしかへてうちはらひさぬとふものをゆくみづのかへらぬごとくふくかぜのみえぬがごとくあともなきよのひとにしてわかれにしいもがきせてしなれごろもそでかたしきてひとりかもねむ
現代語訳 夕方になると葦のほとりに鳴き立て、夜明けとともに沖に飛んでいっては波間に漂う鴨よ。鴨でさえ妻と連れだって、尾羽に霜よ降るなと白妙の羽をさし交わし払い合っては寝るというものを。流れゆく水が戻らないように、吹く風が目に見えないように、残る跡とて無い世間の人間として死んでいった妻。その着せてくれた古ごろもの袖を片側だけ敷いて、私は一人で寝るのかなあ。
歌人 丹比大夫 / たぢひのまへつきみ
歌体 長歌
時代区分 第4期
部立 なし
季節 なし
補足 丹比大夫/たぢひのまへつきみ/丹比大夫
詠み込まれた地名 不明 / 不明
関連地名 【地名】不明
【現在地名】不明