歌詳細

山峡に咲ける桜をただ一目君に見せてば何をか思はむ

項目 内容
番号 17-3967
漢字本文(題詞) 忽辱芳音、翰苑凌雲。兼垂倭詩、詞林舒錦。以吟以詠、能戀緒。春可樂。
暮春風景、最可怜。紅桃灼々、戯蝶廻花、翠柳依々、嬌鴬隠葉歌。可樂哉。
淡交促席、得意忘言。樂矣、美矣。幽襟足賞哉。
豈慮乎、蘭隔、琴無用、空過令節、物色軽人乎。所怨有此、不能黙已。俗語云、以藤續錦。聊擬談咲耳。
漢字本文 夜麻我比迩佐家流佐久良乎多太比等米伎美尒弥西氐婆奈尒乎可於母波牟
読み下し文(題詞) 忽ちに芳音を辱くし、翰苑は雲を凌ぐ。兼ねて倭詩を垂れ、詞林錦を舒ぶ。以ちて吟じ以ちて詠じ、能く恋緒をく。春は楽しむべし。
暮春の風景は最も怜ぶべし。紅桃は灼灼にして、戯蝶花を廻りて舞ひ、翠柳は依依にして、嬌鶯葉に隠りて歌ふ。楽しむべきかも。
淡交に席を促け、意を得て言を忘る。楽しきかも、美しきかも。幽襟賞づるに足れり。
豈慮らめや、蘭を隔て、琴用る無く、空しく令節を過ぐして、物色人を軽みせむとは。怨むる所此に有り、黙已をる能はず。俗の語に云はく「藤を以ちて錦に続ぐ」聊かに談笑に擬ふるのみ。
読み下し文 山峡に咲ける桜をただ一目君に見せてば何をか思はむ
訓み やまがひにさけるさくらをただひとめきみにみせてばなにをかおもはむ
現代語訳 山峡を埋めた桜の美しさを、たった一目でもあなたにお見せしたら、何の物思いがありましょう。
歌人 大伴宿禰池主 / おほとものすくねいけぬし
歌体 短歌
時代区分 第4期
部立 なし
季節
補足 大伴池主/おほとものいけぬし/大伴池主
詠み込まれた地名 越中 / 富山