歌詳細
項目 | 内容 |
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番号 | 巻17-3976 |
漢字本文(題詞) | 昨暮来使、幸也以垂晩春遊覧之詩、今朝累信、辱也以相招望野之歌。 一看玉藻、稍寫欝結、二吟秀句、已愁緒。非此眺翫、孰能暢心乎。 但惟下僕、禀性難彫、闇神靡瑩。握翰腐毫、對研忘渇。終日目流、綴之不能。 所謂文章天骨、習之不得也。豈堪探字勒韻、叶和雅篇哉。 抑聞鄙里少兒、古人言無不酬。聊裁拙詠敬擬解咲焉 [如今賦言勒韵、同斯雅作之篇。豈殊将石間瓊、唱聲遊走曲歟。抑小兒譬濫謡。敬寫葉端、式擬乱曰]。 七言一首 杪春余日媚景麗 初巳和風拂自軽 来泥賀宇入 歸鴻引廬赴瀛 聞君嘯侶新流曲 禊飲催爵泛河清 雖欲追尋良此宴 還知染懊脚 短歌二首 |
漢字本文 | 佐家理等母之良受之安良婆母太毛安良牟己能夜万夫吉乎美勢追都母等奈 |
読み下し文(題詞) | 昨暮の来使は、幸ひに晩春遊覧の詩を垂れ、今朝の累信は、辱くも相招望野の歌をふ。 一たび玉藻を看て、稍く欝結を写き、二たび秀句を吟ひて、已に愁緒をく。この眺翫にあらずは、孰か能く心を暢べむ。 ただ惟、下僕、稟性彫り難く、闇神螢くこと靡し。翰を握りて毫を腐し、研に対ひて渇くことを忘る。終日に目流して、綴れども能はず。 所謂文章は天骨にして、習ひて得ず。豈字を探り韻を勒して、雅篇に叶和するに堪へめや。 抑鄙里の少児に聞くに、古人は言に酬へぬこと無しといへり。聊かに拙詠を裁り、敬みて解咲に擬ふ [如今、言を賦し韻を勒し、この雅作の篇に同ず。豈石を将ちて瓊に間へ、声に唱へ走が曲に遊ぶに殊ならめや。そもそも小児の濫に謡ふが譬し。敬みて葉端に写し、式ちて乱に擬へて曰はく]。 七言一首 杪春の余日媚景は麗しく 初巳の和風は払ひて自らに軽し 来燕は泥を銜みて宇を賀きて入り 帰鴻は廬を引きてかに瀛に赴く 聞くならく、君が侶に嘯きて流曲を新たにし 禊飲に爵を催して河清に浮かべるを 追ひて良きこの宴を尋ねむとすれども 還りて知る、懊に染みて脚のなることを 短歌二首 |
読み下し文 | 咲けりとも知らずしあらば黙もあらむこの山吹を見せつつもとな |
訓み | さけりともしらずしあらばもだもあらむこのやまぶきをみせつつもとな |
現代語訳 | 咲いているとも知らないでいたのなら黙ってもいましょうが。このように山吹を見せながら、私はおぼつかない心で。 |
歌人 | 大伴宿禰家持 / おほとものすくねやかもち |
歌人別名 | 少納言, 家持, 越中国守, 大伴家持, 守, 少納言, 大帳使, 家持, 主人 / せうなごん, やかもち |
歌体 | 短歌 |
時代区分 | 第4期 |
部立 | なし |
季節 | 春 |
補足 | 大伴家持/おほとものやかもち/大伴家持 |
詠み込まれた地名 | 越中 / 富山 |