歌詳細
項目 | 内容 |
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番号 | 巻17-3993 |
漢字本文(題詞) | 敬和遊覧布勢水海賦一首<并一絶> |
漢字本文 | 布治奈美波佐岐弖知里尒伎宇能波奈波伊麻曽佐可理等安之比奇能夜麻尒毛野尒毛保登等芸須奈伎之等与米婆宇知奈妣久許己呂毛之努尒曽己乎之母宇良胡非之美等於毛布度知宇麻宇知牟礼弖多豆佐波理伊泥多知美礼婆伊美豆河泊美奈刀能須登利安佐奈芸尒可多尒安佐里之思保美弖婆都麻欲妣可波須等母之伎尒美都追須疑由伎之夫多尒能安利蘇乃佐伎尒於枳追奈美余勢久流多麻母可多与理尒可都良尒都久理伊毛我多米氐尒麻吉母知弖宇良具波之布勢能美豆宇弥尒阿麻夫祢尒麻可治加伊奴吉之路多倍能蘇泥布理可邊之阿登毛比弖和賀己芸由氣婆乎布能佐伎波奈知利麻我比奈伎佐尒波阿之賀毛佐和伎佐射礼奈美多知弖毛為弖母己芸米具利美礼登母安可受安伎佐良婆毛美知能等伎尒波流佐良婆波奈能佐可利尒可毛加久母伎美我麻尒麻等可久之許曽美母安吉良米〻多由流比安良米也 |
読み下し文(題詞) | 布勢の水海に遊覧せる賦に敬み和へたる一首<并せて一絶> |
読み下し文 | 藤波は咲きて散りにき卯の花は今そ盛りとあしひきの山にも野にもほととぎす鳴きしとよめばうちなびく心もしのにそこをしもうら恋しみと思ふどち馬打ち群れて携はり出で立ち見れば射水川湊の州鳥朝なぎに潟にあさりし潮満てば妻呼びかはすともしきに見つつ過ぎ行き渋谿の荒磯の崎に沖つ波寄せ来る玉藻片搓りに縵に作り妹がため手に巻き持ちてうらぐはし布勢の水海に海人船にま梶櫂貫き白たへの袖振り返し率ひて我が漕ぎ行けば乎布の崎花散りまがひ渚には葦鴨騒きさざれ波立ちても居ても漕ぎ巡り見れども飽かず秋さらば黄葉の時に春さらば花の盛りにかもかくも君がまにまとかくしこそ見も明らめめ絶ゆる日あらめや |
訓み | ふぢなみはさきてちりにきうのはなはいまそさかりとあしひきのやまにものにもほととぎすなきしとよめばうちなびくこころもしのにそこをしもうらごひしみとおもふどちうまうちむれてたづさはりいでたちみればいみづかはみなとのすどりあさなぎにかたにあさりししほみてばつまよびかはすともしきにみつつすぎゆきしぶたにのありそのさきにおきつなみよせくるたまもかたよりにかづらにつくりいもがためてにまきもちてうらぐはしふせのみづうみにあまぶねにまかぢかいぬきしろたへのそでふりかへしあどもひてわがこぎゆけばをふのさきはなちりまがひなぎさにはあしがもさわきさざれなみたちてもゐてもこぎめぐりみれどもあかずあきさらばもみちのときにはるさらばはなのさかりにかもかくもきみがまにまとかくしこそみもあきらめめたゆるひあらめや |
現代語訳 | 藤の花はもう咲いて散ってしまった、卯の花が今こそ花盛りだと、あしひきの山にも野にもほととぎすが鳴き立てるので、いちずに心もしおれて、野山のさまに心ひかれて、親しい仲間どうし、馬を並べて共に野に立ってみると、射水川の河口の洲にいる鳥は、朝の凪いだ干潟に餌をあさり、潮が満ちてくると妻を呼んで鳴き交わす。心ひかれつつ見ながら行き、渋谿の荒磯の崎では沖の波が寄せてくる美しい藻を片搓りにして縵を作り、妻のためにと手に纒いて持ってゆく。うるわしい布勢の水海に漁師の船を浮かべ、両側に楫を通し、櫂をつけ、白栲の袖を風になびかせて、連れ立って漕ぎ出してゆくと、乎布の崎には花が散り乱れ、渚には葦鴨が鳴き騒いでいる。さざ波が立つように立ってみても坐ってみても、水海を漕ぎ廻って見る景色は見飽きないことだ。秋になったら黄葉の時に、春なら花の盛りに、どのようにもあなたの気のすむままに、このように景色を見ては心を晴らしましょう。見飽きる日など、どうしてありましょう。 |
歌人 | 大伴宿禰池主 / おほとものすくねいけぬし |
歌体 | 長歌 |
時代区分 | 第4期 |
部立 | なし |
季節 | 夏 |
補足 | 大伴池主/おほとものいけぬし/大伴池主 |
詠み込まれた地名 | 越中 / 富山 |
関連地名 | 【故地名】射水川 【故地名読み】いみずがわ 【現在地名】富山県 【故地説明】小矢部川(岐阜県境から出て、砺波を流れ、高岡市伏木で富山湾に注ぐ)のこと。古昔は現在の庄川も小矢部川に合流して射水川となっていた。 【故地名】渋谷 【故地名読み】しぶたに 【現在地名】富山県高岡市 【故地説明】富山県高岡市渋谷。二上山の東北麓。国府から布勢への途中。 【故地名】布勢の水海 【故地名読み】ふせのみずうみ 【現在地名】富山県氷見市 【故地説明】富山県氷見市の上田子・下田子・窪・神代・布施・十二町などの諸地でかつて囲まれていた湖水。いまわずかに帯状の十二町潟水郷公園にそのなごりをとどめる。 【故地名】乎布の崎 【故地名読み】おうのさき 【現在地名】富山県氷見市 【故地説明】富山県氷見市窪・園付近の地。布勢の水海の南岸、二上山の裾が半島状に突き出たあたり。→布勢 【地名】射水川:渋谿の崎:布勢の水海:乎布の崎 【現在地名】小矢部川:富山県高岡市渋谷。:富山県氷見市南部にかつてあった湖水。:富山県氷見市窪・園の辺に当るか。 |