歌詳細
項目 | 内容 |
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番号 | 巻17-4008 |
漢字本文(題詞) | 忽見入京述懐之作。生別悲兮、断腸万廻。怨緒難禁。聊奉所心一首<并二絶> |
漢字本文 | 安遠迩与之奈良乎伎波奈礼阿麻射可流比奈尒波安礼登和賀勢故乎見都追志乎礼婆於毛比夜流許等母安利之乎於保伎美乃美許等可之古美乎須久尒能許等登理毛知弖和可久佐能安由比多豆久利無良等理能安佐太知伊奈婆於久礼多流阿礼也可奈之伎多妣尒由久伎美可母孤悲無於毛布蘇良夜須久安良祢婆奈氣可久乎等騰米毛可祢氐見和多勢婆宇能婆奈夜麻乃保等登芸須祢能未之奈可由安佐疑理能美太流〻許己呂許登尒伊泥弖伊波婆由遊思美刀奈美夜麻多牟氣能可味尒奴佐麻都里安我許比能麻久波之家夜之吉美賀多太可乎麻佐吉久毛安里多母等保里都奇多〻婆等伎毛可波佐受奈泥之故我波奈乃佐可里尒阿比見之米等曽 |
読み下し文(題詞) | 忽ちに京に入らむとして懐を述べたる作を見る。生別は悲しく、腸を断つこと万回なり。怨むる緒禁め難し。聊かに所心を奉れる一首<并せて二絶> |
読み下し文 | あをによし奈良を来離れ天離る鄙にはあれど我が背子を見つつし居れば思ひ遣ることもありしを大君の命恐み食す国の事取り持ちて若草の足結たづくり群鳥の朝立ち去なば後れたる我や悲しき旅に行く君かも恋ひむ思ふそら安くあらねば嘆かくを留めもかねて見渡せば卯の花山のほととぎす音のみし泣かゆ朝霧の乱るる心言に出でて言はばゆゆしみ砺波山手向の神に幣奉り我が乞ひ祷まくはしけやし君がただかをま幸くもありたもとほり月立たば時もかはさずなでしこが花の盛りに相見しめとそ |
訓み | あをによしならをきはなれあまざかるひなにはあれどわがせこをみつつしをればおもひやることもありしをおほきみのみことかしこみをすくにのこととりもちてわかくさのあゆひたづくりむらとりのあさだちいなばおくれたるあれやかなしきたびにゆくきみかもこひむおもふそらやすくあらねばなげかくをとどめもかねてみわたせばうのはなやまのほととぎすねのみしなかゆあさぎりのみだるるこころことにいでていはばゆゆしみとなみやまたむけのかみにぬさまつりあがこひのまくはしけやしきみがただかをまさきくもありたもとほりつきたたばときもかはさずなでしこがはなのさかりにあひみしめとそ |
現代語訳 | 青丹の美しい奈良の都を離れて来て、ここは天ざかる鄙ではあるけれど、あなたとお逢いしていると心が慰められることもあったが、今あなたは、天皇の命令を尊み、その統治の公務に従って、若草の妻の結ぶ脚帯、手装りをして、群鳥のように朝出発しようとしている。いってしまったら、残された私が悲しいだろうか。それとも旅ゆくあなたの方が恋しく思おうか。あれこれと思うわが身は安らかでないので、この嘆きをおさえがたく外に出て景色を見渡すと、卯の花の咲く山に鳴くほととぎすがいる。私もそのように声をあげて泣いてしまう。朝霧がかかる。そのように乱れるわが心を口に出して言うことは憚られるので、礪波山の峠の神に幣をささげて私は祈る。愛すべきあなたが無事に旅路を往復して、来月になったらすぐに、なでしこの咲き誇るようなあなたの直(ただ)身を、私に見せてください、と。 |
歌人 | 大伴宿禰池主 / おほとものすくねいけぬし |
歌体 | 長歌 |
時代区分 | 第4期 |
部立 | なし |
季節 | 夏 |
補足 | 大伴池主/おほとものいけぬし/大伴池主 |
詠み込まれた地名 | 越中 / 富山 |
関連地名 | 【故地名】砺波山 【故地名読み】となみやま 【現在地名】富山県小矢部市 【故地説明】小矢部市西南方、倶利伽羅峠のある山。越中と加賀との境。 【故地名】奈良 【故地名読み】なら 【現在地名】奈良県奈良市 【故地説明】奈良市を中心に、東の春日・高円の連山・北の奈良山・西の生駒山に囲まれた奈良盆地北部の地。元明天皇和銅三(710)年以降70余年間、平城京のいとなまれた所。 【地名】奈良:礪波山 【現在地名】ほぼ今日の奈良市に当る。:礪波山は富山県小矢部市石動町西南の倶利伽藍峠のある山。 |