歌詳細

ちちの実の父の命ははそ葉の母の命凡ろかに心尽くして思ふらむその子なれやもますらをや空しくあるべき梓弓末振り起こし投矢持ち千尋射渡し剣大刀腰に取り佩きあしひきの八つ峯踏み越えさしまくる心障らず後の世の語り継ぐべく名を立つべしも

項目 内容
番号 19-4164
漢字本文(題詞) 慕振勇士之名歌一首〔并短歌〕
漢字本文 知智乃實乃父能美許等波播蘇葉乃母能美己等於保呂可尒情盡而念良牟其子奈礼夜母大夫夜无奈之久可在梓弓須恵布理於許之投矢毛知千尋射和多之劔刀許思尒等理波伎安之比奇能八峯布美越左之麻久流情不障後代乃可多利都具倍久名乎多都倍志母
読み下し文(題詞) 勇士の名を振るはむことを慕へる歌一首〔并せて短歌〕
読み下し文 ちちの実の父の命ははそ葉の母の命凡ろかに心尽くして思ふらむその子なれやもますらをや空しくあるべき梓弓末振り起こし投矢持ち千尋射渡し剣大刀腰に取り佩きあしひきの八つ峯踏み越えさしまくる心障らず後の世の語り継ぐべく名を立つべしも
訓み ちちのみのちちのみことははそばのははのみことおほろかにこころつくしておもふらむそのこなれやもますらをやむなしくあるべきあづさゆみすゑふりおこしなげやもちちひろいわたしつるぎたちこしにとりはきあしひきのやつをふみこえさしまくるこころさやらずのちのよのかたりつぐべくなをたつべしも
現代語訳 ちちの実の父君やははそ葉の母君が通り一ぺんに心配しているような、そんな子ではどうしてあろう。大夫は空しく生きてはいけない。梓弓の末をふり立て、投矢によって遠く射通し、剣太刀を腰に帯び、あしひきの山を幾つも越えてここに任ぜられた心を晴れやかに、後世に語りつがれるような名声を立てるべきであるよ。
歌人 大伴宿禰家持 / おほとものすくねやかもち
歌人別名 少納言, 家持, 越中国守, 大伴家持, 守, 少納言, 大帳使, 家持, 主人 / せうなごん, やかもち
歌体 長歌
時代区分 第4期
部立 なし
季節
補足 大伴家持/おほとものやかもち/大伴家持
詠み込まれた地名 越中 / 富山