歌詳細

時ごとにいやめづらしく八千種に草木花咲き鳴く鳥の声も変はらふ耳に聞き目に見るごとにうち嘆きしなえうらぶれしのひつつありけるはしに木の晩の四月し立てば夜隠りに鳴くほととぎす古ゆ語り継ぎつるうぐひすの現し真子かもあやめぐさ花橘を娘子らが玉貫くまでにあかねさす昼はしめらにあしひきの八つ峰飛び越えぬばたまの夜はすがらに暁の月に向ひて行き帰り鳴きとよむれどいかに飽き足らむ

項目 内容
番号 19-4166
漢字本文(題詞) 詠霍公鳥并時花歌一首〔并短歌〕
漢字本文 毎時尒伊夜目都良之久八千種尒草木花左伎喧鳥乃音毛更布耳尒聞眼尒視其等尒宇知嘆之奈要宇良夫礼之努比都追有来波之尒許能久礼能四月之立者欲其母理尒鳴霍公鳥従古昔可多里都藝都流鴬之宇都之真子可母菖蒲花橘乎𡢳嬬良我珠貫麻泥尒赤根刺晝波之賣良尒安之比奇乃八丘飛超夜千玉乃夜者須我良尒暁月尒向而徃還喧等余牟礼杼何如将飽足
読み下し文(題詞) 霍公鳥と時の花とを詠める歌一首〔并せて短歌〕
読み下し文 時ごとにいやめづらしく八千種に草木花咲き鳴く鳥の声も変はらふ耳に聞き目に見るごとにうち嘆きしなえうらぶれしのひつつありけるはしに木の晩の四月し立てば夜隠りに鳴くほととぎす古ゆ語り継ぎつるうぐひすの現し真子かもあやめぐさ花橘を娘子らが玉貫くまでにあかねさす昼はしめらにあしひきの八つ峰飛び越えぬばたまの夜はすがらに暁の月に向ひて行き帰り鳴きとよむれどいかに飽き足らむ
訓み ときごとにいやめづらしくやちぐさにくさきはなさきなくとりのこゑもかはらふみみにききめにみるごとにうちなげきしなえうらぶれしのひつつありけるはしにこのくれのうづきしたてばよごもりになくほととぎすいにしへゆかたりつぎつるうぐひすのうつしまこかもあやめぐさはなたちばなををとめらがたまぬくまでにあかねさすひるはしめらにあしひきのやつをとびこえぬばたまのよるはすがらにあかときのつきにむかひてゆきかへりなきとよむれどいかにあきだらむ
現代語訳 四季それぞれに、一層珍しくさまざまに草木の花が咲き、鳥の鳴き声も違って思われる。それらを耳に聞き目に見るたびに、溜息をつき心もしおれて慕って来たところ、木の下が暗くなる四月になると、夜の闇の中に鳴く霍公鳥よ。昔から言い伝えてきた、鶯のまことの子よ。菖蒲や花橘を少女たちが珠に通す頃まで、茜いろの昼は一日中あしひきの山々を飛び越え、ぬばたまの夜は一晩中鳴きとおして、夜明けの月に向かって飛びかけり、鳴きしきるのだけれども、飽きることとてない。
歌人 大伴宿禰家持 / おほとものすくねやかもち
歌人別名 少納言, 家持, 越中国守, 大伴家持, 守, 少納言, 大帳使, 家持, 主人 / せうなごん, やかもち
歌体 長歌
時代区分 第4期
部立 なし
季節
補足 大伴家持/おほとものやかもち/大伴家持
詠み込まれた地名 越中 / 富山