歌詳細

桃の花紅色ににほひたる面輪のうちに青柳の細き眉根を咲み曲がり朝影見つつ娘子らが手に取り持てるまそ鏡二上山に木の暗の繁き谷辺を呼びとよめ朝飛び渡り夕月夜かそけき野辺にはろはろに鳴くほととぎす立ち潜くと羽触りに散らす藤波の花なつかしみ引き攀ぢて袖に扱入れつ染まば染むとも

項目 内容
番号 19-4192
漢字本文(題詞) 詠霍公鳥并藤花一首〔并短歌〕
漢字本文 桃花紅色尒尒保比多流面輪乃宇知尒青柳乃細眉根乎〓麻我理朝影見都追𡢳嬬良我手尒取持有真鏡蓋上山尒許能久礼乃繁谿邊乎呼等余米旦飛渡暮月夜可蘇氣伎野邊遥〻尒喧霍公鳥立久〻等羽觸尒知良須藤浪乃花奈都可之美引攀而袖尒古伎礼都染婆染等母
読み下し文(題詞) 霍公鳥と藤の花とを詠める一首〔并せて短歌〕
読み下し文 桃の花紅色ににほひたる面輪のうちに青柳の細き眉根を咲み曲がり朝影見つつ娘子らが手に取り持てるまそ鏡二上山に木の暗の繁き谷辺を呼びとよめ朝飛び渡り夕月夜かそけき野辺にはろはろに鳴くほととぎす立ち潜くと羽触りに散らす藤波の花なつかしみ引き攀ぢて袖に扱入れつ染まば染むとも
訓み もものはなくれなゐいろににほひたるおもわのうちにあをやぎのほそきまよねをゑみまがりあさかげみつつをとめらがてにとりもてるまそかがみふたがみやまにこのくれのしげきたにへをよびとよめあさとびわたりゆふづくよかそけきのへにはろはろになくほととぎすたちくくとはぶりにちらすふぢなみのはななつかしみひきよぢてそでにこきれつしまばしむとも
現代語訳 桃の花が紅色に輝いているような顔立ちの中に、青柳のような細い眉を笑い崩して、朝の姿を映しつつ少女が手にとる真鏡の二上山に、木の下を暗くして木木が繁る谷間を鳴き響かせて朝を飛びうつり、夕月のかすかな野辺に遥かに鳴く霍公鳥よ。それがくぐり飛ぶとて羽を振って散らす藤波の花に心ひかれて、引きよせて袖に扱き入れたことだ。藤の花色に、袖がしみるならしみるのもよいと。
歌人 大伴宿禰家持 / おほとものすくねやかもち
歌人別名 少納言, 家持, 越中国守, 大伴家持, 守, 少納言, 大帳使, 家持, 主人 / せうなごん, やかもち
歌体 長歌
時代区分 第4期
部立 なし
季節
補足 大伴家持/おほとものやかもち/大伴家持
詠み込まれた地名 越中 / 富山
関連地名 【故地名】二上山
【故地名読み】ふたがみやま
【現在地名】富山県高岡市
【故地説明】富山県高岡市と氷見市との間の二上山(259メートル)。山頂は高岡市。
【地名】二上山
【現在地名】奈良県葛城市(旧北葛城郡当麻町)の西にある山