歌詳細

ここにしてそがひに見ゆる我が背子が垣内の谷に明けされば榛のさ枝に夕されば藤の繁みにはろはろに鳴くほととぎす我がやどの植ゑ木橘花に散る時をまだしみ来鳴かなくそこは恨みず然れども谷片付きて家居せる君が聞きつつ告げなくも憂し

項目 内容
番号 19-4207
漢字本文(題詞) 廿二日、贈判官久米朝臣廣縄、霍公鳥怨恨歌一首〔并短歌〕
漢字本文 此間尒之氐曽我比尒所見和我勢故我垣都能谿尒安氣左礼婆榛之狭枝尒暮左礼婆藤之繁美尒遥〻尒鳴霍公鳥吾屋戸能殖木橘花尒知流時乎麻太之美伎奈加奈久曽許波不怨之可礼杼毛谷可多頭伎氐家居有君之聞都〻追氣奈久毛宇之
読み下し文(題詞) 二十二日に、判官久米朝臣広縄に贈れる、霍公鳥の怨恨の歌一首〔并せて短歌〕
読み下し文 ここにしてそがひに見ゆる我が背子が垣内の谷に明けされば榛のさ枝に夕されば藤の繁みにはろはろに鳴くほととぎす我がやどの植ゑ木橘花に散る時をまだしみ来鳴かなくそこは恨みず然れども谷片付きて家居せる君が聞きつつ告げなくも憂し
訓み ここにしてそがひにみゆるわがせこがかきつのたににあけさればはりのさえだにゆふさればふぢのしげみにはろはろになくほととぎすわがやどのうゑきたちばなはなにちるときをまだしみきなかなくそこはうらみずしかれどもたにかたづきていへゐせるきみがききつつつげなくもうし
現代語訳 ここから背後に見えるあなたの家の囲いの谷で、朝になると榛(ハン)の枝に、夕べになると藤の花の繁みに、遠く鳴く霍公鳥は、わが家に植えた橘の花が散る時にも、まだ時が早いとて、来ては鳴かない。そのことは怨めしく思わないが、しかし谷近くに住んでおられるあなたが、声を耳にしながらそれを告げて来ないことも、つらいことだ。
歌人 大伴宿禰家持 / おほとものすくねやかもち
歌人別名 少納言, 家持, 越中国守, 大伴家持, 守, 少納言, 大帳使, 家持, 主人 / せうなごん, やかもち
歌体 長歌
時代区分 第4期
部立 なし
季節
補足 大伴家持/おほとものやかもち/大伴家持
詠み込まれた地名 越中 / 富山