歌詳細

古にありけむ人の倭文幡の帯解きかへて伏屋立て妻問ひしけむ葛飾の真間の手児名が奥つ城をこことは聞けど真木の葉や茂りたるらむ松の根や遠く久しき言のみも名のみもわれは忘らえなくに

項目 内容
番号 3-431
漢字本文(題詞) 過勝鹿真間娘子墓時、山部宿禰赤人作歌一首〔并短歌〕
〔東俗語云、可豆思賀能麻末乃弖胡〕
漢字本文 古昔有家武人之倭文幡乃帯解替而廬屋立妻問為家武勝壮鹿乃真間之手兒名之奥槨乎此間登波聞杼真木葉哉茂有良武松之根也遠久寸言耳毛名耳母吾者不所忘
読み下し文(題詞) 勝鹿の真間娘子の墓を過ぎし時に、山部宿禰赤人の作れる歌一首〔并せて短歌〕
〔東の俗語に云はく、かづしかのままのてご〕
読み下し文 古にありけむ人の倭文幡の帯解きかへて伏屋立て妻問ひしけむ葛飾の真間の手児名が奥つ城をこことは聞けど真木の葉や茂りたるらむ松の根や遠く久しき言のみも名のみもわれは忘らえなくに
訓み いにしへにありけむひとのしつはたのおびときかへてふせやたてつまどひしけむかづしかのままのてこながおくつきをこことはきけどまきのはやしげりたるらむまつのねやとほくひさしきことのみもなのみもわれはわすらえなくに
現代語訳 昔いたという男たちが倭文織の帯を解きあい、小さな妻屋も作って求婚したという、葛飾の真間の手児名の墓はこことは聞くのだけれども、真木の葉が茂ってしまったのだろうか、松の根のように遠く久しくなったのだろうか。墓をそれと見ることはなくても、言い伝えだけでも、名前だけでも、わたしは忘れられないことだ。
歌人 山部宿禰赤人 / やまべのすくねあかひと
歌人別名 山部宿禰明人
歌体 長歌
時代区分 第3期
部立 挽歌
季節 なし
補足 山部赤人/やまべのあかひと/山部赤人
詠み込まれた地名 下総 / 千葉:茨城
関連地名 【故地名】葛飾
【故地名読み】かつしか
【故地説明】下総国。千葉県東葛飾郡・松戸市・市川市、東京都葛飾区・江戸川区、埼玉県北葛飾郡などの江戸川流域の地。
【故地名】真間
【故地名読み】まま
【現在地名】千葉県市川市
【故地説明】千葉県市川市真間付近の地。江戸川の東、国府台高地の南側の崖下にあたる。往古はこの辺まで海が入り込んで入江をなしていた。
【地名】葛飾:真間
【現在地名】埼玉県北葛飾郡、東京都葛飾区・江戸川区、千葉県東葛飾郡・松戸市・市川市など、江戸川下流の沿岸一帯の地:千葉県市川市真間町付近