歌詳細
項目 | 内容 |
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番号 | 巻5-800 |
漢字本文(題詞) | 令反或情歌一首〔并序〕 |
漢字本文(序文など) | 或有人。知敬父母、忘於侍養、不顧妻子、軽於脱屣、自稱倍俗先生。 意氣雖揚青雲之上、身體猶在塵俗之中。未驗修行得道之聖、蓋是亡命山澤之民。 所以指示三綱、更開五教、遣之以歌、令反其或。歌曰 |
漢字本文 | 父母乎美礼婆多布斗斯妻子美礼婆米具斯宇都久志余能奈迦波加久叙許等和理母智騰利乃可可良波志母与由久幣斯良祢婆宇既具都遠奴伎都流其等久布美奴伎提由久智布比等波伊波紀欲利奈利提志比等迦奈何名能良佐祢阿米幣由迦婆奈何麻尒麻尒都智奈良婆大王伊摩周許能提羅周日月能斯多波阿麻久毛能牟迦夫周伎波美多尒具久能佐和多流伎波美企許斯遠周久尒能麻保良叙可尒迦久尒保志伎麻尒麻尒斯可尒波阿羅慈迦 |
読み下し文(題詞) | 惑へる情を反さしむるの歌一首〔并せて序〕 |
読み下し文(序文など) | 或は人あり。父母を敬ふことを知りて、侍養を忘れ、妻子を顧みずして、脱よりも軽みす。自ら倍俗先生と称ふ。 意気は青雲の上に揚るといへども、身体は猶塵俗の中に在り。いまだ修行徳道の聖を験さず。蓋しこれ山沢に亡命する民ならむ。 所以、三綱を指示し、更五教を開き、遺るに歌を以ちてして、その惑を反さしむ。歌に曰はく |
読み下し文 | 父母を見れば尊し妻子見ればめぐし愛し世の中はかくぞことわりもち鳥のかからはしもよ行くへ知らねばうけ沓を脱き棄るごとく踏み脱きて行くちふ人は石木より生り出し人か汝が名告らさね天へ行かば汝がまにまに地ならば大君いますこの照らす日月の下は天雲の向伏す極みたにぐくのさ渡る極み聞こし食す国のまほらぞかにかくに欲しきまにまに然にはあらじか |
訓み | ちちははをみればたふとしめこみればめぐしうつくしよのなかはかくぞことわりもちどりのかからはしもよゆくへしらねばうけぐつをぬきつるごとくふみぬきてゆくちふひとはいはきよりなりでしひとかながなのらさねあめへゆかばながまにまにつちならばおほきみいますこのてらすひつきのしたはあまくものむかぶすきはみたにぐくのさわたるきはみきこしをすくにのまほらぞかにかくにほしきまにまにしかにはあらじか |
現代語訳 | 父や母を見ると尊く思われる。妻や子を見ると、かわいくいとしく感じられる。世の中は、これこそ道理ではないか。そう思うと、黐にかかった鳥のように、いくらもがいても逃れがたく、わずらわしいことよ。父母・妻子への気持は果てしもないのだから。破れた靴を脱ぎすてるように世の中から脱け出して行くという人は、岩や木からうまれ出た人なのか。一体あなたは何という人か、名をおっしゃい。あなたがもし天にでもいくのなら、思いのとおりでよいだろうが、このまま地上にいるのなら、大君のおられる、この輝く日月の下は、天雲が遠くたなびく果てまで、ひきがえるが渡っていく際まで、すべて大君のお治めになるすぐれた国土であるよ。とにかくもお考えのとおりに。そうではないだろうか。 |
歌人 | 山上臣憶良 / やまのうへのおみおくら |
歌人別名 | 憶良, 良, 憶良, 憶良臣, 憶良大夫, 山上憶良, 山上憶良臣, 山上大夫, 山上, 良, 最々後人, 臣, 大夫 / おくら, ら |
歌体 | 長歌 |
時代区分 | 第3期 |
部立 | 雑歌 |
季節 | 秋 |
補足 | 山上憶良/やまのうへのおくら/山上憶良 |
詠み込まれた地名 | 不明 / 不明 |