歌詳細

いかにあらむ日の時にかも音知らむ人の膝の上我が枕かむ

項目 内容
番号 5-810
漢字本文(題詞) 大伴淡等謹状
梧桐日本琴一面〔對馬結石山孫枝〕
此琴夢化娘子曰、余託根遥嶋之崇巒、晞■(𠦝+夸)九陽之休光。
長帶烟霞、逍遥山川之阿、遠望風波、出入鴈木之間。唯恐百秊之後、空朽溝壑。
偶遭良匠、散為小琴。不顧質麁音少、恒希君子左琴。即歌曰
漢字本文 伊可尒安良武日能等伎尒可母許恵之良武比等能比射乃倍和我麻久良可武
読み下し文(題詞) 大伴淡等の謹みて状す
梧桐の日本琴一面〔対馬の結石山の孫枝なり〕
この琴夢に娘子に化りて曰はく、「余根を遙島の崇き巒に託け、韓を九陽の休き光に晞す。
長く煙霞を帯びて、山川の阿に逍遙し、遠く風波を望みて、雁木の間に出入す。唯百年の後に、空しく溝壑に朽ちむことを恐るるのみ。
偶良匠に遭ひて、散られて小琴と為る。質の麁く音の少しきを顧みず。恒に君子の左琴を希ふ」といへり。即ち歌ひて曰はく
読み下し文 いかにあらむ日の時にかも音知らむ人の膝の上我が枕かむ
訓み いかにあらむひのときにかもこゑしらむひとのひざのへわがまくらかむ
現代語訳 いつの日にか私の音色を理解してくれる人の膝の上に、私は枕するのでしょうか。
歌人 大伴宿禰旅人 / おほとものすくねたびと
歌人別名 師, 大納言, 大伴卿, 老, 大伴淡等, 大伴卿, 僕, 主人, 帥, 帥老, 大納言, 大納言卿, 大宰帥, 中納言, 後人, 卿 / そち, だいなごん
歌体 短歌
時代区分 第3期
部立 雑歌
季節
補足 大伴旅人/おほとものたびと/大伴旅人
詠み込まれた地名 不明 / 不明
関連地名 【故地名】対馬
【故地名読み】つしま
【現在地名】長崎県
【故地説明】国名。長崎県の対馬。上県郡、下県郡に当たる南北の二島。大陸渡航の要衝。
【故地名】大和
【故地名読み】やまと
【故地説明】(倭・日本)大和朝廷の勢力のおよんだ範囲をあらわす語で、奈良県天理市大和(大和神社がある)あたりの地方名から起こり、大和中央平原部、奈良県全体、近畿一帯から日本全国の総名へと発展したという。集中の歌は大和中央平原部・大和国(奈良県全体)・日本国の総名など種々に用いている。
【故地名】結石山
【故地名読み】ゆうしやま
【現在地名】長崎県上県郡上対馬町
【故地説明】長崎県上県郡上対馬町河内の結石山(183メートル)のこと。対馬の北端に近い。