歌詳細

遠つ人松浦佐用姫夫恋に領巾振りしより負へる山の名

項目 内容
番号 5-871
漢字本文(題詞) 大伴佐提比古郎子、特被朝命、奉使藩國。艤棹言歸、稍赴蒼波。
妾也松浦〔佐用嬪面〕、嗟此別易、歎彼會難。
即登高山之嶺、遥望離去之船、悵然断肝、黯然銷魂。遂脱領巾麾之。傍者莫不流涕。
因号此山曰領巾麾之嶺也。乃作歌曰
漢字本文 得保都必等麻通良佐用比米都麻胡非尒比例布利之用利於返流夜麻能奈
読み下し文(題詞) 大伴佐提比古の郎子、特に朝命を被り、使を藩国に奉る。艤棹して言に帰き、稍蒼波に赴く。
妾松浦〔佐用比売〕、この別るるの易きを嗟き、彼の会ふの難きを嘆く。
即ち高山の嶺に登りて、遙かに離れ去く船を望み、悵然みて肝を断ち、黯然みて魂を銷す。遂に領巾を脱ぎて麾る。傍の者涕を流さずといふこと莫し。
これに因りてこの山を号けて領巾麾の嶺と曰ふ。乃ち歌を作りて曰はく
読み下し文 遠つ人松浦佐用姫夫恋に領巾振りしより負へる山の名
訓み とほつひとまつらさよひめつまごひにひれふりしよりおへるやまのな
現代語訳 遠い人を待つ――松浦佐用姫が夫恋しさに領巾を振ってから負っている山の名よ。
歌人 大伴宿禰旅人 / おほとものすくねたびと
歌人別名 師, 大納言, 大伴卿, 老, 大伴淡等, 大伴卿, 僕, 主人, 帥, 帥老, 大納言, 大納言卿, 大宰帥, 中納言, 後人, 卿 / そち, だいなごん
歌体 短歌
時代区分 第3期
部立 雑歌
季節 なし
補足 大伴旅人/おほとものたびと/
詠み込まれた地名 肥前 / 佐賀:長崎
関連地名 【故地名】領巾麾の嶺
【故地名読み】ひれふりのみね
【現在地名】佐賀県唐津市
【故地説明】佐賀県唐津市鏡の鏡山(283メートル)。北に虹の松原がある。
【故地名】松浦
【故地名読み】まつら
【故地説明】肥前国の郡名。佐賀県東・西松浦郡、唐津市、伊万里市、長崎県南・北松浦郡の地、唐津湾をかこむ佐賀県東松浦郡と唐津市あたりが中心。
【地名】1松浦
【現在地名】佐賀県東・西松浦郡、唐津市、伊万里市および長崎県の北・南松浦郡、松浦市などに分れる