歌詳細

おしてる難波の国は葦垣の古りにし里と人皆の思ひ休みてつれも無くありし間に続麻なす長柄の宮に真木柱太高敷きて食国を治めたまへば沖つ鳥味経の原にもののふの八十伴の緒は庵して都なしたり旅にはあれども

項目 内容
番号 6-928
漢字本文(題詞) 冬十月、幸于難波宮時、笠朝臣金村作歌一首〔并短歌〕
漢字本文 忍照難波乃国者葦垣乃古郷跡人皆之念息而都礼母無有之間尒続麻成長柄之宮尒真木柱太高敷而食国乎治賜者奥鳥味経乃原尒物部乃八十伴雄者廬為而都成有旅者安礼十方
読み下し文(題詞) 冬十月、難波宮に幸しし時に、笠朝臣金村の作れる歌一首〔并せて短歌〕
読み下し文 おしてる難波の国は葦垣の古りにし里と人皆の思ひ休みてつれも無くありし間に続麻なす長柄の宮に真木柱太高敷きて食国を治めたまへば沖つ鳥味経の原にもののふの八十伴の緒は庵して都なしたり旅にはあれども
訓み おしてるなにはのくにはあしかきのふりにしさととひとみなのおもひやすみてつれもなくありしあひだにうみをなすながらのみやにまきばしらふとたかしきてをすくにををさめたまへばおきつとりあぢふのはらにもののふのやそとものをはいほりしてみやこなしたりたびにはあれども
現代語訳 一面に日が照る難波の国は、葦で編んだ垣が枯れるように古くなった里として人々が皆忘れてしまい関係も無くなっていた間に、績(う)んだ麻糸のように長い長柄の宮に、立派な柱を太く高々と建てて君臨なさり御領土をお治めになると、沖を飛ぶ味鴨――味経の原に、勇猛なたくさんの廷臣たちは仮小屋を作って都のようにしたことだ。旅ではあるのだけれど。
歌人 笠朝臣金村 / かさのあそみかなむら
歌体 長歌
時代区分 第3期
部立 雑歌
季節
補足 笠金村/かさのかなむら/笠金村【笠朝臣金村】
詠み込まれた地名 河内 / 大阪
関連地名 【故地名】味経の原
【故地名読み】あじふのはら
【現在地名】大阪府大阪市天王寺区
【故地説明】大阪府天王寺区東高津・長柄に隣接し、孝徳の別宮のあった地。同区味原本町・小橋町(おばせちょう)一帯の地か。上町台地の一角にあたり難波宮址の南の地。一説に大阪府摂津市正雀(しょうじゃく)・三島・別府(べふ)(旧三島郡味生村)。
【故地名】長柄の宮
【故地名読み】ながらのみや
【現在地名】大阪府大阪市
【故地説明】→難波の宮
【故地名】難波の国
【故地名読み】なにわのくに
【現在地名】大阪府
【故地説明】大阪市およびその周辺の地域。上町台地に沿った海辺を中心に難波津が営まれ、当時海内無比の要津。仁徳・孝徳・聖武の皇居も営まれた。
【故地名】難波の宮
【故地名読み】なにわのみや
【現在地名】大阪府大阪市
【故地説明】仁徳天皇の高津宮・孝徳天皇の難波長柄豊碕宮・聖武天皇の難波宮をいう。宮址はいずれも高津宮とほぼ同地。
【地名】難波の国:長柄の宮:沖つ鳥:味経の原
【現在地名】大阪府:大阪市中央区法円坂町一帯:大阪市天王寺区味原町・下味原町の一帯か